主任教授・診療科長大場 洋(おおば ひろし)
放射線医学は画像診断、interventional radiology(IVR)、放射線治療の3部門に分けられます。
画像診断部門にはX線CT、MRI、単純写真などを用いた各疾患の診断、放射性医薬品を投与しSPECTやPETを撮像して診断を行う核医学が含まれます。年間にCT検査約38,000件、MRI検査約12,500件、核医学検査数約7,000件が施行され、これらの検査の診断報告書は、レポートシステムと電子カルテを介して速やかに担当医に送られ、各科の診療に役立てられています。
IVR部門は、血管造影、CT、超音波検査などの画像を見ながら様々な疾患の治療を行なう部門です。心臓と脳血管領域を除く血管系IVR [動脈塞栓術、血管拡張術、胃食道静脈瘤塞栓術、CVポートの留置など]約500件と、非血管系IVR [CTガイド下生検など]約150件)を行なっています。当科のIVRの特徴としては、優れたスタッフが揃い、夜間、休日を含めて、随時、緊急IVR(外傷性出血や消化管出血に対する動脈塞栓術など)の依頼に対応、病院の診療レベルの維持に努めています。
放射線治療とは、様々な種類の放射線を用いて癌を治療する方法です。放射線治療部門では年間約450例の悪性腫瘍に対して、腫瘍の種類や広がりに応じた綿密な治療計画を立て、外照射装置や密封小線源治療装置を用いた放射線治療(照射部位は約500、照射件数は約13,000)を行っています。治療部門では7年前に肺腫瘍、脳腫瘍に対する定位放射線治療を開始、4年前から前立腺癌や脳腫瘍に対する強度変調放射線治療(IMRT)を行なっており、より精度の高い放射線治療を目指して努力を続けています。
ご存知の様に、放射線医学の臨床では、他科との連携を保つことが極めて重要です。放射線科の各部門では多くの科とカンファランスを続けており、帝京がんセンターのキャンサーボードの多数にも参加、これらを通じて他科の診療との緊密な連携に務めています。また、診断部門については毎日、多くの科からの画像診断のコンサルテーションがあり、その対応に努めています。
以上、帝京大学放射線科の仕事の概要を紹介しました。現在の医療には放射線医学は不可欠であり、非常に大きな役割を果たしています。当科では現在、17名の放射線科医(専門医11名を含む)が常勤していますが、病院全体の外来診療、入院診療を支えるために、毎日、誇りを持って働いています。
尚、当院は日本医学放射線学会放射線科専門医修練機関、日本IVR学会専門医修練施設、日本核医学会放射線科専門医教育病院、日本放射線腫瘍学会認定放射線治療施設であり、当科での勤務を通じてこれらの学会の専門医受験資格を得ることが可能です。
当科にはそれぞれの専門分野の臨床に優れた素晴らしいスタッフが集まっています。更に、院外からも数名の高名な放射線科医に来ていただき、当科の臨床、研究、教育について有用なご意見をいただいています。これらの先生は全国の同分野の専門家(放射線科医や、それ以外の科の医師)との深いnetworkを持っています。若いうちに、これらの先生達に接して、放射線医学を学ぶことは、放射線科医としての自己形成に必ず役に立つと思います。帝京大学付属病院は8年前(平成21年5月)に新病院に移転しました。このため、全国でも有数の近代的で、働き易い放射線部を完備しており、新しい画像診断装置、IVR装置、放射線治療装置などが揃っています。多くの若手医師が上記の環境を利用、医学の進歩に貢献するような立派な放射線医に育ってほしいと思っています。帝京大学放射線科での後期研修、大学院への入学に興味がある方は、是非一度、見学に来てください。病院、放射線部、放射線科、十条界隈をご案内します。
大場 洋 略歴
昭和60年 | 金沢大学医学部卒業 |
平成元年 | 金沢大学大学院医学研究科卒業 |
平成元年 | 山梨医科大学放射線科助手 |
平成5年10月~ 平成6年9月 | 米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)神経放射線科客員研究員 |
平成7年 | 山梨厚生病院放射線科医長 |
平成8年 | 公立昭和病院放射線科部長 |
平成13年 | 帝京大学医学部放射線科学講座助教授(名称変更によりその後准教授) |
平成27年 | 帝京大学医学部放射線科学講座教授 |
平成29年 | 帝京大学医学部放射線科学講座主任教授 |